テレビというメディアそのものが危機にあるという。子どもの頃、人びとが新聞よりテレビニュースをみるようになって、学校の先生は嘆いていた。「新聞は何度でも読み返せ、自分で考えられる。だがテレビは単純化した言葉を投げつけてくるだけだ」と。確かにと思った。それでもテレビの力は新聞を凌駕した。
その後ネットが出てきた。15年くらい前、私は学生たちに「新聞・テレビは政府に都合のよいことばかり報じるから、鵜呑みにするな。自らネットで情報を取りに行け」と言っていた。たとえば2011年の東日本大震災と原発事故のとき、原発の危険性を政府や企業が隠そうとするのに対しネットは重要な役割を果たしたと思う。
だがその後ネットは、誹謗中傷や偽情報の手段となった。私は数年前、十代向けの本に「ネットにだけ書いてあることには気をつけろ。新聞やテレビは、事実関係の裏取りはする。マスコミに全く書いていない情報は安易に信じるべきでない」と書いた。自分の言うことが、この10年で180度ひっくり返った。
死は不幸ではない 生は幸福ではない